敵
今週もまた、あいつがやってくる。なんでもない顔をして、何事もなかったかのように颯爽と、俺の前に現れるだろう。薄い紙で武器を隠して。
初めてあいつが来たのは、授業中だった。あいつが時間を全て支配しているのをこの目で見るのは、初めてだった。
バスの中でも、電車の中でも、教室での休み時間でも、家の中でも、俺の友達が、あの子が、親が、先生でさえあいつの話をする。
あいつに振り回されるなんて、もううんざりだ。だけど、あいつがいないと学校が成り立たないことだってわかってる。
だから、俺はお前がきらいだ。成績さえも全て決めてしまうお前が。
もうすぐ俺たちは、あいつと戦った後始末をすることになる。そして二週間後には準備を始め、一か月後にはまた戦うことになるだろう。正直、面倒くさいがしょうがない。
「俺は今回、だめだった。怒られるかもしれない。」
「そんなことないでしょ。いつも笑顔なくせに、何言ってんの。多分あんたより私の方がだめ。絶対怒られる。」
「私、結構できたかも。」
「えー、ほんとに? 私全然できなかったけど。さてはお前、頑張ったな?」
「えへへ。」
「あれとこれができなかったよう。助けて。」
「大丈夫。私もできなかったからさ。」
定期考査という名の敵が、来月もまたやってこようとしている。
あとがき
はじめまして。如月悠と申します。
嫌いなものとぶつかる、戦う前の気持ちを考えて書きました。楽しんでいただけたら幸いです。