2021年度11月号部誌
季節は夏。僕の恋は一つの終わりを迎えた。夏休み前の一週間というのは大きなテストが終わり、授業もあまり進まなくなって、来たる夏休みに胸を弾ませ浮ついた気分になる。そして充実した夏休みを送ろうと無駄な妄想をし目標を立てようとする。あの時の告白…
コーヒー 「不思議だよね」唐突に咲希が言った、何時も歩いているぼこぼこの砂利道を2人で石けりしながら進む、くるくると石を足でコントロールしながら咲希は5m先の看板にぶつけた。「マイノリティ、っているじゃん。私が1番嫌ってたマイノリティ。普通…
「またあとで」「ああ、うん」 最後まで残ってくれていた裏切り者がいなくなってしまえば、一人の為にしてはいささか照明が明るすぎる教室には、俺だけが取り残されていた。 先程までやたらとよく動いていた口元はなりを潜め、俺はただひたすらに、シャーペ…
君の笑顔は、僕の世界を変えてくれた。太陽みたいに眩しくて、見ていると暖かな気持ちになれるその笑顔が、僕は大好きだった。 初めて君を知ったのは、桜が舞い散る季節のこと。「和泉市から来ました、宇佐見愛菜です。 よろしくお願いします。」そう言って…
「トリック・オア・トリート〜!」 ガチャリと開いた扉の向こう、玄関先に立つ私を見て、久志は目を丸くした。顔を見るのは二ヶ月ぶりだが、少し背が伸びたような気がする。一瞬の沈黙の後、ため息を吐きながら弟は言った。「おかえり、姉ちゃん。お菓子なら…