都立武蔵文芸部 デジタル部誌サイト

都立武蔵文芸部の部誌のデジタルVerです。個々の作品を掲載します。予告なく作品の変更・削除を行う可能性があります。ご了承ください。

暗闇

太陽が昇る。目覚ましを止める。起きる。歯を磨いて顔を洗う。5枚切りの食パンをオーブントースターに突っ込む。目玉焼きを作る。黄身が思ったより硬くなった。目玉焼きトーストを黙々と食べた後、制服を着て登校する。なけなしのバイト代で買ったスポーティ…

恋を絶対に成就させる方法、教えます。

季節は夏。僕の恋は一つの終わりを迎えた。夏休み前の一週間というのは大きなテストが終わり、授業もあまり進まなくなって、来たる夏休みに胸を弾ませ浮ついた気分になる。そして充実した夏休みを送ろうと無駄な妄想をし目標を立てようとする。あの時の告白…

情愛

コーヒー 「不思議だよね」唐突に咲希が言った、何時も歩いているぼこぼこの砂利道を2人で石けりしながら進む、くるくると石を足でコントロールしながら咲希は5m先の看板にぶつけた。「マイノリティ、っているじゃん。私が1番嫌ってたマイノリティ。普通…

like you

「またあとで」「ああ、うん」 最後まで残ってくれていた裏切り者がいなくなってしまえば、一人の為にしてはいささか照明が明るすぎる教室には、俺だけが取り残されていた。 先程までやたらとよく動いていた口元はなりを潜め、俺はただひたすらに、シャーペ…

笑顔

君の笑顔は、僕の世界を変えてくれた。太陽みたいに眩しくて、見ていると暖かな気持ちになれるその笑顔が、僕は大好きだった。 初めて君を知ったのは、桜が舞い散る季節のこと。「和泉市から来ました、宇佐見愛菜です。 よろしくお願いします。」そう言って…

帰省

「トリック・オア・トリート〜!」 ガチャリと開いた扉の向こう、玄関先に立つ私を見て、久志は目を丸くした。顔を見るのは二ヶ月ぶりだが、少し背が伸びたような気がする。一瞬の沈黙の後、ため息を吐きながら弟は言った。「おかえり、姉ちゃん。お菓子なら…

糖分補給

ふと目を離した隙に、シャーペンがポッ○ーになっていた。 こう言ったところで誰も信じないのは勿論分かっている。事実、自分が他人に言われたとしても、まず間違いなく疑うだろう。夢でも見ているんじゃないか?現実逃避をするな、早く目の前の問題に集中す…

五千文字キューピッド

恋の成就というのには様々な要因が複雑に折り重なって成立している。お互いの気持ちの揺れ動き、周囲の環境などなど…。そのなかの一つでも違えばそれは成り立たなくなってしまう。そんな繊細な恋愛がうまくいくように事を運ぶ仕事をご存じだろうか?そうキュ…

完全世界

あたしはアイドルの類があまり好きではない。生まれ持った顔ガチャ親ガチャで勝ってそういう職業につけたのだから。世間一般も「かっこいい」と気持ち悪いほどに囲って中身を見ようとありゃしない。気色悪い。 「有咲〜〜ノート写させて」 「またぁ?」 「今…

今週もまた、あいつがやってくる。なんでもない顔をして、何事もなかったかのように颯爽と、俺の前に現れるだろう。薄い紙で武器を隠して。 初めてあいつが来たのは、授業中だった。あいつが時間を全て支配しているのをこの目で見るのは、初めてだった。バス…

部長挨拶

このたび、私たち文芸部の作品をご覧になって下さり、ありがとうございます。都立武蔵文芸部高校部長の卯月望です。 今年初めての部誌がようやく発行できることとなり、嬉しい限りです。去年に引き続き、新型コロナウイルスの影響もあって例年通りとはいかな…

部長挨拶

ブログ執筆者を引き継ぎました、今年度部長の卯月望と申します。活動停止期間など困難は多くありますが、皆様により良い作品を届けることができるよう努力して参ります。 文芸部はこの度から中高合同となり、部員数も10名へと増えました。慣れない状況下では…

まっしろなキャンハス

私の通う大学は古く、色がない、汚れがかかった白の建物が並ぶだけ。 とてもじゃないが、充実している、そして、明るい、とは言えない。 なんというか、真っ白なのに、薄暗いのだ。 しかし、私の大学は、キャンパスがここしかないから、しょうがない。 私は…

モーメント

「ただいま」 誰に聞かせる訳でもないが、玄関に入ってすぐそう呟いて靴を脱ぐ。家の中には誰もいないようだ。まだ四時半だということを考えれば不思議な事でもない。父は仕事で帰りが遅いだろうし、妹は学校。母は夕飯の買い物にでも行ったか。 しかしこん…

記憶喪失

人間関係なんて信用出来る言葉ではない、と思う。 例えば今、すぐそこでスマホゲームのガチャ結果を見せ合いながら笑っているAとBは友人同士である。傍から見れば。心の中でAが「フレンド招待のボーナス目的で誘っただけなのにいつまでもノって来やがって」…

さくら咲

「そして、三つ目の教育目標についてですが……」 体育座りで入学オリエンョンを聞き始めてから、数十分が経過した。欠伸を噛み殺しながら、授業の残り時間に思いを馳せる。話を聞いておかなければならないと頭では理解していても、集中しようとすればするほど…

部長挨拶

東京都立武蔵高等学校文芸部部長の、高二の栄啓あいです。 今回は、部活禁止期間等もあり、発行が遅くなってしまいました。 それでも発行出来たこと、嬉しく思います。 そして、今回は、嬉しいことに、部誌に参加する人数が増えました。 なんと、新入部員と…

公園の鍵

鍵を、忘れた。 失くしたわけではない。忘れただけなのだ。 誰が?私が。いつ?今、いや、忘れた時刻ならば今朝か。どこで?置き忘れたのは家の中、あの買い物袋だろう。昨夜アイスを冷凍庫に入れるのに気を取られたのが良くなかった。 ともかく、今現在、私…

あの花の匂いをもう一度

ある夢を見た。 眼前は一面に花畑が広がっていた。 すごくきれいだった。 そして同時に、もう死ぬのかもしれない、とも思った。 はっと目を覚ますと、そこには自分の部屋が映り込んでいた。 夢だと分かったとたん、がっかりしたが、少しほっとした。 そして…

気遣いのお茶会

私はお茶が好きだ。 特に好きなのは、緑茶、抹茶、麦茶とかだ。 抹茶なんかはすごく良い。 自分で抹茶の粉を茶碗に入れて、そこにお湯を入れて茶筅で立てる。 ある程度になったら立てるのをやめ、数回茶碗を回してからズズっと飲む。 これが、自分で立てたこ…

部長挨拶

こんにちは 都立武蔵高等学校文芸部高校二年の栄啓あいです。 今年は、新型コロナウィルスの影響で、一学期中の部誌の印刷は見送ることとなりましたが、二学期の部誌は無事発行出来ました 今年は高一が一人入部致しまして、存続の危機は免れました。 今年は…

2020年度新部長挨拶

こんにちは。 次期部長になりました。栄啓あいと申します。 現在、高一は一人で、文芸部としては大変厳しい状況です。 ですが、そんな中でも、文芸部をなんとか良い状態で存続できるように頑張っていきます。 来年度は、少し新しいこともしていきたいと考え…

2019年度部長挨拶

こんにちは。文芸部部長のどらいのいんです。2019年度最後の部誌を無事に発行することができました。今年度は合同部誌等新しい取り組みに挑戦してきましたが、いかがだったでしょうか。来年度もまた新たな取り組みを行うかもしれません。恐らく私が企画…

朝(あした)

朝、目覚める。 様々な喧騒の中、私を起こす声がある。 「水里!!早く起きて!!」 そして、瞼を開けたり閉じたりしている。 まだ眠いよ…。時間的にまだ大丈夫じゃん。 そう思い、また眠る。 そうするとすぐに、「水里!!!」という怒鳴り声が聞こえる。 …

村と都市

私は、ある「村」に住んでいる女子高生だ。 バスは数時間に一本、電車はない代わりに、森がたくさん生い茂っおり、生物も多種多様である。 学校には、自転車で三十分、電車で三十分かけて行っている。 今は夏休みであり、蝉がぎゃんぎゃん泣いている。 私は…

パソコンのあい

画面の割れたパソコン――ある人にとってはゴミかもしれないが、彼にとっては懐かしい思い出の品だった。確か買ってもらったのは中学生になってからだ。リビングに鎮座する家族兼用のパソコン。夜、静まりかえった室内で親のアカウントをこっそり使って年齢制…

2019年度文化祭部誌を発行いたしました。

2019年度、都立武蔵高校での文化祭の部誌を発行いたしましたので、このサイトでも掲載いたします。 作品は 「大きくなったら帰っておいで!」「テセウスの星」 「ひとめぼれ?」「その魂は何処へ行く」「苦楽」 の5つです。 なお、アンケートもありますので…

テセウスの星

生命を作り出せるのは神と人間のみ。昔見た映画はうまく未来を予知していた。 人間とロボットが共存を初めて、二十年が経った。初期のロボットはアニメや映画で見るようなずんぐりとした形だったが、最近のものとなればモデルも腰を抜かすほど魅惑的な歩みを…

苦楽

私は、学校のHRが終わると、こんな噂を聞いた。 このクラスのある女子が、今日、処刑される、と。 私は、理由も聞かずに、ただその人のことが気になった。 身近な人が殺される、というのは、とても苦手で、好きではない。 といっても、私はそのような経験…

ひとめぼれ?

今日もあの子がいる。同じ教室にあの子がいる。 爽やかな風の中、あの子と二人きりでいる。 混雑がひどい電車を降り、改札を降りると、後ろにあの子がいた。 なぜか、できるだけ近づかないようにしてしまう。 近づいたら、好意がばれてしまいそうな気がして…