都立武蔵文芸部 デジタル部誌サイト

都立武蔵文芸部の部誌のデジタルVerです。個々の作品を掲載します。予告なく作品の変更・削除を行う可能性があります。ご了承ください。

作:栄啓あい

まっしろなキャンハス

私の通う大学は古く、色がない、汚れがかかった白の建物が並ぶだけ。 とてもじゃないが、充実している、そして、明るい、とは言えない。 なんというか、真っ白なのに、薄暗いのだ。 しかし、私の大学は、キャンパスがここしかないから、しょうがない。 私は…

あの花の匂いをもう一度

ある夢を見た。 眼前は一面に花畑が広がっていた。 すごくきれいだった。 そして同時に、もう死ぬのかもしれない、とも思った。 はっと目を覚ますと、そこには自分の部屋が映り込んでいた。 夢だと分かったとたん、がっかりしたが、少しほっとした。 そして…

気遣いのお茶会

私はお茶が好きだ。 特に好きなのは、緑茶、抹茶、麦茶とかだ。 抹茶なんかはすごく良い。 自分で抹茶の粉を茶碗に入れて、そこにお湯を入れて茶筅で立てる。 ある程度になったら立てるのをやめ、数回茶碗を回してからズズっと飲む。 これが、自分で立てたこ…

朝(あした)

朝、目覚める。 様々な喧騒の中、私を起こす声がある。 「水里!!早く起きて!!」 そして、瞼を開けたり閉じたりしている。 まだ眠いよ…。時間的にまだ大丈夫じゃん。 そう思い、また眠る。 そうするとすぐに、「水里!!!」という怒鳴り声が聞こえる。 …

村と都市

私は、ある「村」に住んでいる女子高生だ。 バスは数時間に一本、電車はない代わりに、森がたくさん生い茂っおり、生物も多種多様である。 学校には、自転車で三十分、電車で三十分かけて行っている。 今は夏休みであり、蝉がぎゃんぎゃん泣いている。 私は…

成長したら帰っておいで!

この前、友達と海釣りに出掛けた。 母が用心に用心をするようにと、ライフジャケットの着用を強要された。 確かに、それがあってよかったかもしれない。 堤防の方が、全然空いてなかったので、磯まで行った。 磯の方では、釣りにいかにも慣れてそうな人もい…

ひとめぼれ?

今日もあの子がいる。同じ教室にあの子がいる。 爽やかな風の中、あの子と二人きりでいる。 混雑がひどい電車を降り、改札を降りると、後ろにあの子がいた。 なぜか、できるだけ近づかないようにしてしまう。 近づいたら、好意がばれてしまいそうな気がして…

苦楽

私は、学校のHRが終わると、こんな噂を聞いた。 このクラスのある女子が、今日、処刑される、と。 私は、理由も聞かずに、ただその人のことが気になった。 身近な人が殺される、というのは、とても苦手で、好きではない。 といっても、私はそのような経験…